ネタを昆布で挟み、冷蔵庫で一晩程度置くことで、淡白な魚の身に昆布の豊かな旨みと香りが合わさり、新たな旨みが作られる。また余分な水分が抜けることで、ネタの保存性が増し、さらに食感も良くなる。あくまでも主役は白身魚であり、昆布の風味が付き過ぎると、繊細な旨味を打ち消すことになる。
昆布締めで一番大切なことは、昆布の塩加減だ。酸洗い(水洗いもあり)した昆布に軽く塩を振り、白身魚をそのまま挟みます。魚に直接塩を振らないのは、塩気が強く出過ぎるのを嫌っているからだ。昆布の旨みとともに、塩気を含ませると、白身の口当たりが柔らかくなる効果を狙っている。昆布締めとは、ネタの日持ちをさせて、かつさらに美味しく仕上げようという江戸前ならではの工夫と知恵の結晶と言える。
これを科学的に言えば、グルタミン酸をもっと含む食材、昆布と白身の魚に多く含まれるイノシン酸という2種類の旨み成分を組み合わせると、旨みは飛躍的に強くなる。それと魚や肉の旨み成分イノシン酸は時間の経過とともに増えるため、白身魚などを適度に熟成してから使う。