一口に穴子と言っても、世界では20種類以上確認されている。その中でも寿司ネタに使われるのは、南日本を中心に生息する御殿穴子と黒穴子、そして最も寿司ネタに適していると言われるのが、真穴子だ。江戸前寿司店で、穴子と言えば、真穴子のことを指す。
一年を通して美味しく味わえるネタだが、特に脂のって旨いとされるのが、6~7月。梅雨により川から養分が海中に流れ込み、それによって餌が増えるため、さらに美味しくなるという。
江戸前寿司の元祖、華屋與兵衛が店を出した時には、寿司ネタとして蛤や車海老と共に、煮物として穴子が加えられていたという。このように江戸前寿司の初めからネタとして使われていたのだから、今もその仕込みには細心の注意が払われ、それゆえ店それぞれの味の違いが生まれている。
煮上がった穴子を口に入れればふんわりとろけ、上質な脂がやさしく舌を包み込む。塩で食べるもよし、甘いツメで食べるもよし。また握る際に軽く炙り、口の中が溶けた脂で満たされるのもよい。
【アナゴの基本データ】
分類:ウナギ目アナゴ科クロアナゴ属
学名:Conger myriaster (Brevoort, 1856)
地方名:トオヘイ(大分県)、ホシアナゴ(兵庫県)、ハカリメ(関東、和歌山県)、カリメ(関東、神奈川県)、トヘイ(千葉県)、ヨネズ(富山県)、タチウヲクラゲ(紀州)、ゴマ(山口県)、ビリス、ドテダオシ(鹿児島県)、ハモ(北海道、東北地方、山陰地方、北陸)、ホンアナゴ(神奈川県)、メジロ(三重県、名古屋)、メバチ(高知県)、ベースケ(伊予)、ハム(富山県)、ドグラ(有明海)、メジロ(愛知県)、キンリョウノメ(和歌山県田辺)、、ドテダオシ(鹿児島県)
魚名の由来:日中、岩穴や砂の中に、身を潜める生態から、その名が付いた。